院長のごあいさつ
石川県立こころの病院のホームページにアクセスいただき、ありがとうございます。
当院は精神保健福祉法に規定された設置義務に基づいて石川県が設置している精神科病院です。病床数はすべて精神病床で400床(精神科救急急性期病棟44床、急性期治療病棟50床、認知症治療病棟50床を含む)、令和5年4月1日現在の常勤医師数は16人、その他の職員数は臨時職員も含めると318人です。石川県精神科救急システムの基幹病院として365日24時間体制で救急患者を受け入れており、また石川県認知症疾患医療センターを併設し、県の認知症医療の中心的存在として活動しています。「災害拠点精神科病院」にも指定されています。
当院は、令和3年11月21日に石川県立こころの病院と名称を変更しました。英語表記もIshikawa Prefectural Hospital of Mental Healthとし、これまでの、重症の精神疾患を主な対象とした病院から、地域のこころの健康を支える病院として成長していきたいと考えています。これに合わせ、病院の理念も「私達は地域社会のこころの健康を支えるために最良の医療を提供します」に改めました。新しい病院では、精神科救急急性期医療、認知症など老年期精神医療の二本柱に加え、依存症医療と児童思春期精神医療にもより注力することとし、これら4つを運営の柱にしていきたいと考えています。令和元年から始まった管理診療棟の新築工事も最後の第4期工事が始まっており、今年の秋には完成します。新しい外来棟は一般成人、高齢者、児童思春期(2階)、依存症(工事中)の4つにゾーニングし、患者さんに分かりやすく、利用しやすい構造になっています。また就労している方のために、依存症外来の一部とメンタルヘルス外来を午後に開設しようと、現在準備中です。
令和2年から全世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症ですが、当院でも令和4年度に3回の院内クラスターを経験し、精神科病院における感染管理の困難さを思い知らされました。新型コロナの感染症法上の位置づけについて、この5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行しますが、ウイルスの感染力が弱くなるわけではありません。これからも気を緩めることなく、院内感染対策チームを中心に標準予防策の徹底に努めたいと考えています。
コロナ禍は、多くの生活困窮者を生み、女性や子供の自殺者、不登校やゲーム依存が増え、テレワークによる生活習慣の乱れからうつ病を発症する若者が増えるなど、国民のメンタルヘルスに多大な影響を与えました。以前から問題になっていた格差社会にさらに拍車がかかったように思います。このような社会情勢の変化により、地域でのメンタルヘルスに関するニーズは多様化し、認知症対策や高齢者の孤独や孤立、老老介護、認認介護といった高齢者の問題、産後うつ対策などを含む母子保健や子育て支援、児童・高齢者・障害者への虐待やDVへの対応、ひきこもりや8050問題、ゲーム依存やネット依存、ギャンブル依存などの行動嗜癖、生活困窮者や生活保護、そして自殺対策など、精神保健医療福祉の分野における課題は山積しています。専門医療機関として行政や関係諸機関との連携を今以上に深め、地域における「こころの問題」に対処していきたいと考えています。
日ごろから、高い診療レベルを得るには日々研究的な視点で臨床にあたることが重要であると考えています。臨床研究、看護研究など、当院の研究マインドは高く、医局に限らず、看護部や作業療法科からも数本の論文が出ています。研修分野では日本精神神経学会、日本認知症学会、日本老年精神医学会の認定研修施設であり、新専門医制度においては金沢大学からの4人の専攻医が研鑽を積んでいます。石川県立中央病院の初期研修ローテートに加え、学生実習も多く受け入れており、石川県立看護大学、石川県立総合看護専門学校の看護学生のほか、金沢大学医学類の第4~5年次の診療参加型臨床実習も行われています。金沢大学の医学生全員が当院での臨床実習を2週間経験することになります。
医療の効率化が叫ばれる昨今ですが、精神科医療においては時間がかかってもしっかりと疾病教育を行い、再入院を防ぐことが重要ですし、薬ばかりに頼らず、生活習慣改善に目を向けることも必要です。一番大切なのは、患者さんが自分たちの望むような社会生活を営めることであり、我々は一人一人と丁寧に関わりながらそれを支援していきます。職員一同、日々努力して参りますので、みなさまのより一層のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。
令和5年4月1日 石川県立こころの病院 病院長 北村 立