ドイツで開催された公募展でグランプリを受賞されたというニュースを聞き、
工房を訪ねお話を伺いました。
世界を見据え活躍する原点とその原動力とは・・・
ものづくりに興味を持ったのは、エンジニアをしていた父の影響が強いです。
仕事で海外にも行っていたので、かっこよく感じました。
休みの日は日曜大工をしたりして、家の納屋で机とか椅子を手作りしてくれました。その姿を見るのも好きで、そういうことから「ものを作る仕事」への憧れが芽生えていたと思います。
初めてやきものに触れたのは、小学校の時で、課外学習で上絵体験をしたのが最初。当時、卒業文集に「陶芸家になる」って書いていたらしいです。自分では覚えてなかったんですけど、何年か前友達から聞きました。「叶えてるやん!」って。
---研修所では基礎コースを卒業され、のちに実習科の造形コースで腕を磨かれました。
デザイン支援事業にも長く参加されていましたね。
2か月に1回の勉強会で、伊藤慶二先生と山村真一先生に作品を見ていただいていました。
僕は、先生方に「どうしたら良くなるか」のアドバイスを貰いたいというより、自分の作品を見ていただき、先生方がどんな反応をされるのかを知りたくて参加していました。
先生方からのアドバイスを参考に、どんどん新作を作っていました。
その中から、自分の定番商品と呼ばれるものもたくさんうまれましたし、先生方の意見を直接聞ける機会は大変貴重でした。
---中田さんは、卒業後もコンスタントに個展をされたり、様々なコンペで受賞したりと、作家としてとても活躍をされています。
華やかなところだけとりあげられがちですけど、実際は、、大変だとは言いたくないですが、いきなり作家だと言っても、それだけで生活できるわけはなく、僕は家族もいますから、収入も必要。アルバイトを掛け持ちして、昼間はあっちで、夜はこっちでと働いて、その合間に制作する、といったハードな生活をしていました。
---やめようと思ったりしなかったんですか
大変でしたけど、それでもやめなかったのは、周りの理解があったからです。
一度、家族に陶芸をやめて他の仕事に落ち着くことを相談したら、すごく反対されました。
好きでやっていることを、あきらめてほしくなかったんだと思います。
応援してくれることへの感謝の気持ちもそうですが、そう思ってくれている家族がいるからこそ、「やらなくては!」という気持ちがモチベーションになって、続けることができているんだと思います。
---以前から食器中心に制作されていましたが、最近はアートの分野でも作品を発表されていますね。
はじまりは、金沢の食器のコンペでの受賞でした。そのときの作品を東京の百貨店のバイヤーさんが見て下さって、食器売り場で展示会をさせてもらえることになったんです。
それで、東京に行くということで、せっかくだからギャラリーやうつわ屋を巡ろうと思い、色々調べて東京に出かけました。
その時に、今お世話になっているギャラリーを訪ねたのが大きなきっかけです。
---どんな出会いだったんですか?
その空間に入って、「ここに自分の作品を置けるようになりたい!」と強く感じました。
それまで、食器じゃないやきものとか、アートとか、そういう分野のことを意識したことがなかったし、ほとんど知らなかったんですけど、
そのギャラリーには、そんな自分でも知っているような有名な陶芸家の作品が展示されていました。
ギャラリーの空間の中で作品を前にしたとき、そのたたずまいとかパワーみたいなものに圧倒されて、純粋に感動したんです。
---なるほど。
そのときから、そこで個展をすることが目標になりました。
その後も機会のあるたびにそのギャラリーを訪ねては、憧れを募らせていたんですけど、僕が「菊池ビエンナーレ」という公募展で入選したとき、ギャラリーを訪ねたらたまたま店主の方にお会いすることができたんです。作品を見ていただいたところ、個展をさせていただけることになったんです。本当にすごく嬉しかった。
---海外でも活躍されています。
そのギャラリーを通じて、海外のアートフェアなどで作品を紹介してもらう機会をいただいたんです。今回のドイツでの受賞も、そういったご縁が巡って、いただいた賞です。
もともと、海外で活躍したい!という気持ちは持っていましたが、こんなに早くその機会が訪れたのは予想外でした。
---これからも活躍の場が広がりそうですね。
僕は5年スパンで目標を決めているんです。
35歳までにこれをする、40歳までにはこれ、45歳までに、、、って決めてある。
それを達成するために、逆算していけば今やるべきことが見えてくるでしょう。
目標はたくさんあります。50歳またその先の未来が楽しみですね。(笑)
賞をいただいたりすると、浮き足立ったりしがちだけれど、そういうときこそ今まで応援してくれた人や、築いてきた信頼関係を大切にしたいと思います。本当に、色々な方々に支えてもらって今の自分があると思っていますので。
---やきものを志す後輩にメッセージをお願いいたします。
いろんなことをやっていったらいいと思います。
僕もはじめは上絵をやっていたけど、どんどん変化していきましたから。
いろんなことをやっていく中で、作り方や技法を身につけていけば、できることの引き出しが増えるでしょう?
探しながら、選択していく過程が大切だと思います。
ある作品を人に見せたとき、「やきものでつくる必要あるの?」って言われたことがあるんですけど、僕は「やきものでつくる必要のないものはない」と思っています。
どんなものでも、やきもので作ってもいいじゃないですか。
やってやろうぜー
(H26/5/14取材)
中田雅巳 |
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1997年 | 石川県立九谷焼技術研修所基礎コース卒業 | |
2004年 | 川北町にて独立 | |
2005年 | 国際陶磁器展美濃陶磁器デザイン部門 入選(同11年) | |
2006年 | 益子陶芸展 入選(同08年) 出石磁器トリエンナーレ 入選 金沢わん・One大賞「ひと・器・出会い」展 優秀賞 |
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2007年 | 京畿道世界陶磁ビエンナーレ(韓国) 入選 金沢市工芸展 金沢市長最優秀賞(同09年) |
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2008年 | ながさき陶磁器展 審査員特別賞 |
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2010年 | 現代美術展 入選(同12・13年) |
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2011年 | 菊池ビエンナーレ 入選(同13年) 日本陶芸展 入選(同13年賞候補) 現代美術展 北国賞(同14年) 長三賞常滑陶芸展 入選(同13年) |
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2012年 | 東京青山酉福ギャラリーにて個展 Galelie Maeianne Heller(独・ハイデルベルグにて4人展) |
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2013年 | Collect出展(英・ロンドン)(同14年) Galelie Maeianne Heller(独・ハイデルベルグにて7人展) |
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2014年 | ART STAGE SINGAPOLE'14出展 Meister der Moderne 2014 バイエルン州賞(グランプリ) (独・ミュンヘン) |