使い込まれたガス窯、その奥には仕事場。
田舎のおばあちゃんの家のような
板の間の居間がある。
その窓から見える緑の景色が美しい。
彼女は一枚の絵を持っている気持ちだ、と
窓を開け放ってくれた。
---卒業されてから、どうされたんですか?
弟子入りのかたちで就職しましたね。それこそ犬の散歩から、下準備から。いろいろな経験をさせてもらいましたよ。
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稲積さんは表現活動の個展で生活してる!バリバリの陶芸家ってイメージですが、、、。
そんな事ないですよ。この工房の家賃15,000円が払えなかった時もありました。個展はしていますけど、なかなか黒字にはなりませんね。今は陶芸教室・食器制作が主な収入。でも食器ばっかり、逆に表現活動ばっかりに偏っちゃうと上手くいかないんですね。
どちらも私には必要。バランス取り合って、発想のやり取りがあって上手くいくって感じかな。
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自分の制作と陶芸教室の両立は難しくないですか?
私が陶芸教室をはじめようと思った理由は、使い捨てで成り立っている現代の消費社会の中で商品制作以外に何か役立つ事が出来ないか考えたからなのです。
手で土をこねながら思いを土に写していく。そんな作業をすることで、人間性までモノ化していくのに反作用するんじゃないかと考えました。だから効率とか成果をある程度脇に置いた創造的な遊び場の提供をしたいと思ったんです。
今度陶芸教室の方達の作品発表会を企画しています。皆さん気合いが入っていますし、協力して準備を進めています。
そんな方のお手伝い的発想で陶芸教室、そして私の個展からは何かを感じてもらいたいと考えています。
---どのようにして創った物を発表しているのですか?
今は小売店に卸させてもらったりかな。以前に私の作品を買ってくださった方が、不思議な御縁で何年も経ってからまた連絡して下さったりとか・・・。私の作品を気に入って下さった方を大切にしています。「縁が縁を呼び」という感じでしょうかね。
あと、今思っているのは公募展にもっと出していこうって事。
いろいろな人に観てもらいたいから、その回数を増やしたいんです。
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最後になりましたが、陶芸を志し後輩となる方に一言お願いします。
自分を表現していく事、これは奥が深く、人生全部かけての仕事。だから楽しい。死ぬまでの仕事。
見つけられた人はしあわせだと思う。やりがいがあって、終わりが無いのよねぇ。
稲積佳谷 (うつつ窯) |
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1995年 | 石川県九谷焼技術研修所卒業 |
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1999年 | '99世界工芸コンペティション金沢 入選 | |
2002年 | 個展「不は不」(金沢INAXギャラリー) あさご芸術の森大賞展 入選 |
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2003年 | 個展「時を愛でる」(金沢 銀の波箔座) | |
2005年 | 企画展「金沢からお正月」「日本のかたち」(銀座松屋) | |
2006年 | 「和ろうそくと燭台」展(銀座松屋) 個展「やわらぎの器」(ギャラリートネリコ) |
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2007年 | 個展「天空の記憶」(ギャラリートネリコ) | |
2012年 | ギャラリーつつじヶ丘オープン | 他、企画展・グループ展多数 |