中学生の頃から「九谷焼を仕事にしたい」と考えていた山﨑大輝さんは、九谷焼を学べる地元の高校を卒業して研修所に入学しました。研修所では3年間学び、令和元年(2019)に卒業。能美市九谷焼美術館の体験館に指導スタッフとして就職しています。
広く九谷焼の魅力を伝える仕事をしながら、将来は憧れの九谷庄三※のような絵付け師になりたいという夢をもって頑張っています。
※九谷庄三…江戸後期~明治時代の陶画工 彩色金襴手で花鳥山水などを描き輸出品としても好評を得た


山﨑さんの就職先である能美市九谷焼美術館は、令和2年(2020)に現在の名称に変更され、歴史を学ぶ五彩館・九谷焼の代表的な作家である浅蔵五十吉記念館・九谷焼の体験が出来る体験館・製造を見学できる職人工房の四館を九谷焼の発信地として設定されました。

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この取材では、研修所の卒業生が、何を学びどのように考えて就職しているのかを取材し、研修生やモノづくりを志そうとする方に向けて、様々なメッセージが伝わる事を目的としています。



研修所に入学し、やりたいことがより明快になりました

 

 

-------山崎さんは研修生の頃から「九谷庄三」が好きで、時間があれば図案を練ったり、それを絵付けしていましたよね。3年目での研究科の自主研究テーマにもなっていましたが、何かきっかけはあったのですか。


山﨑さん:もともと北斎や細かい描写の作品が好きで、能美市九谷焼美術館 五彩館の作品群にも感銘を受けていたので、とにかく九谷焼だ!と思い研修所に入学しました。 入学して2年目 髙聡文先生の「庄三写し」の授業を受けてからは、「これだ!」って感じて夢中になって描いていました。とにかく楽しくて、これをずっと続けるためにはどうしたら良いのかばかり考えていました。


-------就職や将来の事はどう考えていましたか。


山﨑さん:今思えば、就活とか生活の事をそんなに考えていなかったんでしょうね。今はここに採用して頂いて凄く感謝しています。 来館された方に自分が好きな九谷焼の魅力をもっと知って欲しいし「たのしかったよ」とか「ありがとう」とか言ってもらった時にやりがいを感じます。休日や帰宅してからは自分の制作が出来ているのも恵まれていると思っています。


 



 

 

-------就職して気づいた事とかありますか。


山﨑さん:今まで九谷焼しか興味がなかったのですが、ここでは焼物全般の知識を必要とされるので知らなかったことが沢山あったことに気づきました。 思い返せば、自分でアンテナを張っていなかっただけかもしれませんが、研修生の頃は工夫もせずに言われたとおりにしか課題をやっていなかったなぁって。 今の職場では良い上司にも恵まれて、仕事と制作と両方で充実しています。

 




 

デザインを考えたり筆を持って描いている時、とても気持ちが落ち着きます

 

 

-------なるほど。将来は九谷焼の絵付け師という夢を持っている山﨑さんですが、職場での学びは自分の制作にも影響するのでは?


山﨑さん:そうですね。九谷焼らしいものを作っていきたい事は変わらないですが、古典から線描きを学び、自分らしく構図を組んだり色づかいを現代風にしたりの工夫をしています。もっと深みがあって自分らしい表現を目指しています。


-------最後になりますが、九谷焼を学んでいる後輩にやっておくべき事など一言アドバイスをお願いします。


山﨑さん:まず、自分の絵付けスタイルを早く見つけ持つ事。自分は庄三の画風が好きで見た人から「誰の作品かすぐに分かるよ」とよく言われます。 あと、それを表現するための技術をつけることも大切。習うだけじゃなく習得しておく事が大事です。そして、時間がある時には30分でも良いから筆を持ったら良いですね。


-------確かに、山﨑さんは常に何かを描いていましたね。これは研修生も実践して欲しい習慣だと思います。どうもありがとうございました。


 



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少年の頃から志していた九谷焼の道を邁進している山﨑さん。職場での学びが益々彼を成長させている様子でした。

 

 


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