令和2年(2020)春、研究科を卒業し、絵付け職人として就職した水髙果鈴さん。

研修生の頃からのこだわりは「丁寧な仕事」。これからも、今以上に「丁寧な仕事」を心がけて、より職人として成長したい。自分のこだわりが、時と共に職人のこだわりに成長していました。

水髙さんの就職先は、九谷竹隆窯。2代目の北村和義先生は九谷焼技術研修所の卒業生(平成9年度卒)、現在は研修所で講師をして頂いています。


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この取材では、研修所の卒業生が、何を学びどのように考えて就職しているのかを取材し、研修生やモノづくりを志そうとする方に向けて、様々なメッセージが伝わる事を目的としています。

今回は、絵付け職人として就職している水髙さんと、その雇用主である北村先生、先輩職人である下川さん(平成12年度卒)に色々と伺います。







-------まず、水髙さんの就職するまでのお話を聞かせてもらえますか。


水髙さん:最初、本科2年生を卒業して絵付けで就職したいと考えていたので、北村先生の工房に「企業研修」に行かせてもらいました。 (※企業研修:就職を希望する研修生が、企業で実務経験をするカリキュラム)

 

-------北村先生、水髙さんの「企業研修」での印象はいかがでしたか?


北村先生:大皿に呉須で青海波(伝統小紋の一つ)の線描き(九谷焼の黒い線の事)をしてもらいました。企業研修期間で描き切れないと思ったんだけど、描き上げましたね。頑張りがあって、線描きが出来ると思いました。



-------でも「企業研修」後、水髙さんは就職せずに研究科に進学しましたよね?


水髙さん:そうです。「企業研修」行かせてもらったのですが、実際にやってみて、ひたすら小紋を描く事に自信を持つことが出来ませんでした。当時は自分で制作することが楽しくて、やっぱり「進学したい!」って思いました。高校卒業後すぐに研修所へ入学したので、もっと出来ることの幅を広げたいと思い研究科に進学しました。




 

研究科に進学して、苦手が自信になりました

 

-------なるほど、「進学」か「就職」か迷ったのですね。ところで、水髙さんの苦手ってどんな事だったんですか。


水髙さん:上絵付課題の技法の習得を目的とした「写し」は得意だったのですが、その技法を使った自由作品の制作が苦手でした。そこを学びたかったんです。



北村先生:僕も進学したから分かるけど、研究科で学ぶことも多いだろうし賛成しました。工房としては求人していたんで、水髙さんに就職して欲しかったんだけどね。だから、研究科の間はアルバイトに来てもらっていました。真面目に頑張ってくれていましたよ。


水髙さん:研究科を振り返ると、色々学べたし苦手も克服できた気がします。進学して良かったと思っています。 そして、その間バイトをさせてもらって気づいたんですが、北村先生の作風である線描きと色絵は、自分の得意とすることと合っていると感じるようになり、それを活かせるこの職場に就職したいと考えるようになりました。


-------今はどのような仕事をしていますか?


水髙さん:線描きが主です。色塗りもしますが、やっぱり線描きの方が得意です。時間の過ぎるスピードも早く感じますね。色塗りは、先輩の下川さんの方が綺麗に早く仕上げる事が出来るので、先輩にはかないません。


下川さん:私は長年勤めさせてもらっています。水髙さんは「今日はここまでやる!」って決めて段取りを組んだり、仕事に対してまっすぐな気持ちで取り組んでいますから、どんどん上手になっていますよ。しっかりしています。就職した時点で即戦力って感じでしたね。



 

 

自分の得意な事を見つけるといいですね
そして、私は、そこを伸ばす事を意識しました

 

-------充実した感じが伝わってきますね。では、振り返って研修生のうちにやっておくべきことはありますか?後輩にアドバイスをお願いします。


水髙さん:就職を考えたとき「自分をよく知る」「自分の性格をよく考える」ということを意識しました。私は同じことを繰り返し丁寧に描くことが得意でした。「ここに関しては同級生の中でも自信が持てる!」と思っていました。 今、小絞を描く仕事は楽しいし、やっぱり自分に向いていると感じています。嫌なことは続かないけど、好きなことは続けられますよね。


北村先生:水高さんはメキメキ腕を上げていますよ。小絞を描く仕事は技術と根気が必要で、向き不向きがあるんですが彼女は向いていますね。上手く描けても続かない人には向かないです。この仕事に取り組む気持ちが大切だと考えています。


-------最後に、今後の目標をお願いします。


水髙さん:職人として会社の役に立つ仕事をしたいと思っています。仕事は同じことの繰り返しに見えるかもしれませんが、学ぶことはあって、「ここを直していかなきゃ」とか、仕事の中でいろんな課題が見つかるんです。


北村先生:研修生の将来として、作家という道もあるし、職人という道もあります。担い手としての技術習得は大切で職人仕事は奥が深い。彼女のように職人の仕事を理解して志してくれる人が増えるといいですね。


 

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九谷焼の後継者育成を目的に、九谷焼技術研修所が開所して37年。 卒業生が母校の後輩を雇用してくれることも増えました。先人から引き継がれた技術と精神は、卒業生から今学んでいる研修生へと引き継がれている事を感じます。あなたも伝統工芸の継承者になってみませんか。


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