令和2年(2020)春、本科を卒業した岡崎 萌さんは、九谷青窯に入社しました。思い描いた器が作りたい!もっと技術を身につけたい!そんな意欲が岡崎さんからは伝わってきました。



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この取材では、研修所の卒業生が、何を学びどのように考えて就職しているのかを取材し、研修生やモノづくりを志そうとする方に向けて、様々なメッセージが伝わる事を目的としています。
今回は、成形から絵付けまで一貫制作している青窯に就職した岡崎さんと、代表の秦 耀一さんにお話を伺います。





-------群馬県出身の岡崎さんですが、九谷焼を志した理由を教えて下さい。


岡崎さん:大学を卒業して2年間は地元で就職をしていました。でも、手で触れて物を作るということに憧れていたので、絵付けも出来る九谷焼に魅力を感じて思い切って退職したんです。

-------本科で2年間学んだ後、青窯に就職したのですね。


岡崎さん:研修生の頃に見学させてもらって、働いている方の商品がとても好きでしたし、“形から絵付けまで、自らの商品アイディアを提案できる会社”という所が魅力的で「ここに就職したい!」と思いました。

 



 

九谷焼を仕事にする。そのために必要な事。

 

-------青窯の代表である秦さんには、これまでも多く卒業生がお世話になっています。岡崎さんも採用して頂きましたが、採用理由を教えて頂けますか。


秦さん:やりたい気持ちを信じた。それだけですね。
長年この仕事をしているのですが、昔と比べると九谷焼は規模が縮小していますよね。そこを理解したうえで、そこからスタートと考えて仕事をしています。これに関しては社員にもよく話をします。

漠然と作っていても売れるものは作れないし、生活はしていけない。では、どのようにすれば良いのかを考える必要がある。どのような人に使って欲しいのか。その人が来る売り場はどこか?
焼物で食べていける道(生活できる道)を教えています。考えて作る。大切なことです。



-------そうですね。プロには必要な事ですね。


 

試しては失敗し一歩ずつ成長していく日々

 

 

-------入社したての頃はどのような仕事をしていましたか。


岡崎さん:入社して2カ月間、秦さんに言われたのは「器を作ってごらん」のみ。ロクロの練習をしましたが形はまだ思うように作れなかったし、絵付けは購入した素地に染付をしていました。なんだか分からないまま手探りで作っていました。


秦さん:まず自由に作らせています。どんな物を見てきたのか、どんな物が好きなのか、どれ位できるのかを見ていました。私は温故知新が大切だと考えているので、作る物を見ればその子の現状が分かります。


岡崎さん:3カ月目からは青窯のロングセラー商品を作らせてもらいました。商品を手掛けさせてもらうようになって、手早さと同じものを作る正確さが求められると痛感しました。就職して研修期間など無く、初めての事でも即挑戦する、そんなスタートでした。先輩に教えてもらうこともありますが、見て学ぶということが基本なので必死でした。

作って、焼いて、エラーが出る。また作っての繰り返しで学んでいます。大変です。でも、お客様が私の器を気に入って購入してくれたり、インスタにあげてくれたり…それを見ると嬉しくて!頑張ろうって思います。お客様と繋がることが出来て嬉しいです。


秦さん:今まで以上に、積極的に売り場を見て歩いて、現状を見極める力をつけて欲しいですね。そのためには売り場の方との会話を増やさなきゃいけない。そして自分に自信を持たないといけない。積極的にね。




 

個展をさせて頂いた事で、多くの学びがありました

 

-------最近、岡崎さんは個展にも挑戦したと伺いましたが、初個展の開催は良いきっかけになったのでは。


岡崎さん:そうなんです。会社で取り引きしている「器大福」(南青山)でやらせてもらいました。
他に抱えていた仕事もあったし、出来るのかどうか不安もありましたけど、個展をやってみないかとお声掛け頂いたときは「嬉しい!やりたい!」と思いました。これまでも数点の商品を置かせてもらっていたのですが、声掛けして頂いたのは初めてだったので、とにかく挑戦してみたいと思いました。

どんな種類の器を幾つ作ろうとか、展示での見せ方を考えて高低差のあるアイテムを作ろうとか、色々考えました。青窯の仕事をして、その後に時間を作って個展準備を進めて…大変でした。
でも会場を見に行った時、素敵にディスプレイしてくれていて感激しました。とても嬉しかったです。お店の方や来店いただいたお客さんとの会話も勉強になりました。


-------多くの経験を通して職人として頑張っているんですね。では、後輩の研修生に何をしておくべきか、アドバイスを頂けますか。


岡崎さん:どんなことが好きか、どんな焼物が好きか、自分は何がしたいのか、よく考えると良いと思いました。色々見て考えるんです。この焼物のどこが良いのかとか。学ぶきっかけをどんどん作って欲しいと思います。そして色々な技術も身につけておくことも大切だと思います。


-------ありがとうございます。では、岡崎さんの今後について教えて下さい。


岡崎さん:まず自分のスタイルを見つけたいです。私っぽい感じが伝わると良いですね。素朴な可愛らしさを表現したいです。将来ライフスタイルが変わっても、焼き物を続けていきたいので、今はとにかく頑張って、自分のやりたいことを表現する技術を身につけていきたいです。

 

 

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「正確なロクロも、自分らしいデザインの絵付けも、大変なんです。」そう話す岡崎さんは常に笑顔。将来の夢に向かって頑張っている岡崎さんは、楽しみながら器づくりを続け行くのだろうと思いました。


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