3月20日(火)から4月2日(月)まで、
金沢・しいのき迎賓館にて
「平成23年度卒業・修了制作展」および
「デザイン支援事業成果品展 〜それぞれの道・それぞれの風〜」を開催しています。
ところで、デザイン支援事業っていったい何??
という疑問をおもちの方も多いはず。
「デザイン支援事業」とは、独立して制作活動をしている九谷焼技術研修所卒業生を対象とした支援事業です。
作品の講評、技術的な相談、マーケティングの方法など、独立してからの悩みや困りごと、提案に対してアドバイスを受ける機会を設け、よりよい商品づくりを支援しよう!という目的で、陶芸家の伊藤慶二先生・工業デザイナーの山村真一先生を講師としてお招きし、平成17年から実施しています。
事業の参加者は、年間6回、約2ヶ月に一度の講評会でそれぞれが自分の作品を持ち寄ります。
そこで講師の先生や研修所・九谷焼技術センターの職員から講評を受け、指摘された所を次回までに修正する、という反復指導をおこなっています。
それぞれのテーマに基づき、一年間商品開発をするわけですが、
他の受講者の講評も聞くことが出来ますし、ひとりでは解決できなかった問題が解決できたり、思いもよらなかった方向性が見えてきたり。
また、先生からのアドバイスだけでなく、仲間からもさまざまな意見を聞くことができ、
それが刺激となり、勉強につながっています。
今回の企画展では、今年度の参加者13名による成果作品を展示・販売しています。
試行錯誤を重ねた、一年間の想いが詰まった作品がならんでいますので、 是非お手にとって、ご覧ください。
(H24/3/21 wed)
11月29日、本科2年の学外研修ということで、大樋美術館と中村卓夫さんのアトリエを見学させていただきました。
まず、国内外で活躍されている、陶芸家の中村卓夫さんのアトリエを訪問。
先代の中村梅山氏の建てた数寄屋造りの和室や、ギャラリー兼住宅まで案内してくださいました。
「現代の生活の現場で工芸を生みだす」という考えから、
自らの生活空間に対しても非常に高い意識をお持ちの中村卓夫さん。
さまざまなお話を伺うことができました。
「住まい」という空間のなかでの工芸のありかたを考えるきっかけになったのではないでしょうか。
次に、今年、文化勲章を受章された大樋長左衛門先生の美術館を訪問。
研修所の顧問でもある先生に展示品の解説と案内をしていただきながら、講義を受けるかたちで毎年訪問しています。
時にユーモアを交えてお話ししていただき、気さくなお人柄とやきものへの愛情を感じました。
授業だけでなく、研修所をとびだして実際に制作される現場や美術館などの優品を見ることも勉強のうち。
色んな考えや新しい世界にふれることで、作り手としての世界も広がるはず。
お世話になった方々に、感謝です。
(2011/12/5 mon)
11月3日から6日の4日間、九谷陶芸村でお祭りがありました。
研修所となりの支援工房九谷では、現役研修生やOB,工房利用者たちによる「工房市」が開かれ、
多くの方にきていただきました!
それぞれの個性あふれる作品たちは
「これは九谷焼??」と思えるほどですが、九谷の色絵の可能性を感じさせてくれます。
もちろん、九谷焼伝統的な表現にこだわり、作品を作っている若手も大勢います。
自由な九谷と、伝統的な九谷。
両方を堪能できる、楽しい工房市になりました。
更新日:12月5日(月)
また、5日(土)には研修所主催の「九谷焼上絵付入門講座」を開催しました。
九谷焼作家の山近剛先生を講師にお迎えして、
みなさんには九谷焼の色絵付を体験していただきました。
事前に描きたい図案を考えてきてもらうようお願いしていたところ・・・
気合いの入った絵がたくさん!
みなさん楽しく、そして真剣に(!)取り組んでいただいたおかげで、すてきな作品がたくさんできました。
紙に描くのと上絵付けでは、勝手はもちろん違いますが
焼き上がった時の発色や質感が一番の醍醐味です。
先日焼成し、こんなふうに仕上がりましたよ!
期間中、天候の悪い日もありましたが
多くの方が「陶芸村まつり」に参加してくださいました。
まことにありがとうございました!
またぜひ、九谷陶芸村に足をはこんでくださいね!
(2011/11/11 fri)
石川県の能美市にある「九谷陶芸村」は、九谷焼を扱うお店のショールームが軒を連ね、九谷焼資料館や九谷焼美術館、九谷焼体験のできる陶芸館など、九谷にまつわる施設が集中するエリアになっています。
九谷焼技術研修所もその中にあり、恵まれた環境の中で研修生は日々研鑽を積んでいます。
今回は研修所に隣接する「支援工房九谷(石川県立九谷焼技術者自立 支援工房)」の紹介をします。
この施設は、若手陶芸家の自立を支援し九谷焼の発展・振興を図ることを目的として平成13年に設立されました。
九谷焼作家として独立を目指す若手が、最長3年間の期限で専用工房を使用できる「個室工房(5室)」と、
ロクロ・窯・上絵室など九谷焼の制作に必要な設備を一般に貸し出している「共同工房」があり、九谷焼に従事する多くの方にご利用いただいています。
また、工房利用者の作品を常設展示しているギャラリーを併設しており、若い感性がつくりだす新しい九谷焼を見ていただくことができます。
ギャラリー
中庭
共同工房は、仕事をしながら自分の制作に励む方が仕事の休みを利用してロクロや絵付けをしに来たり、
すでに工房を構えている方が、個人ではなかなか持つことのできない大規模な設備(大きな窯やポットミルなど)を利用しに来たり。研修所の現役生やOBも多く利用しています。
また、個室工房には現在4名+1組の作り手が入居し、仕事をしています。
各工房の雰囲気も、それぞれの個性が表れていて十人十色。
もちろん、直接作品を購入したり、注文したりすることもできます。
共同工房も個室工房もガラス越しに作り手の制作風景を見ることがでるので、
陶芸村に買い物や観光に訪れた方も、きっと違った角度から九谷焼に触れることができ、身近に感じてもらえるのではないでしょうか。
そして、11月3日(木・祝)〜6日(日)は、そんな九谷陶芸村でお祭りが開催されます。
陶器市はもちろん、ステージイベント・九谷焼体験なども行われます。
支援工房九谷では、工房利用者や研修所学生が中庭に出店・作品販売をおこない、
5日には上絵講座も開催(要予約)します。
是非、足をはこんでみてくださいね!
(2011/10/12 wed)
研修所では、毎年夏休み期間を利用して九谷焼業界・研修所卒業生を対象に、技能向上を目的とした「夏期講座」を実施しています。
その年々に「今、九谷で必要とされる知識・技術」を学ぶ場として講座内容を毎年変えて今年で25回目の開催となりました。
今年の講座は「ロクロ型打ち」
土で作った素焼きの型に、ロクロ引きした皿や碗を打つ技法です。
九谷では、昔からこの技法を用いて食器などが多く作られていました。
しかし、最近ではタタラ粘土(均一に薄くのばした粘土板のこと)を使って型打ちするものが多くなり、型も石膏を用いた型が主流となって、現在九谷でもこの技法を使ってものを作る人は少なくなっています。
講義・デモンストレーションの参加と、4日間の実技講座に参加の2種に応募を分け、
業界・OBから多くの方に参加していただきました。
講師をつとめてくださったのは、伝統工芸士で妙泉陶房代表の山本 篤先生。
型打ち技法を用いて、大物から小物まで繊細な仕事をされる九谷の素地の第一人者です。
先生は、九谷でこの技術が失われることを危惧し、型打ち技法を広めるために
今回の講師を引き受けてくださいました。
先生は講義の合間に
「この技術を修得するのは簡単ではないけれども、こういう技法があると知っているだけで『ロクロといえばまんまるの回転体』という発想に縛られないで、形のアイデアを自由にすることができる。
だから本当は、普段絵を描いている人にこそこの技法を知ってもらって、九谷の素地師がこの技法を用いるチャンスを得ることができればいいと思う。そういうチャンスを得られることが、この技法を存続させる一番の方法だと思うし、産地としての本当の技術向上につながるんじゃないか」
とおっしゃっていました。
分業制が基本の九谷焼にとって、とても大切な意味を含んだ言葉でした。
短い期間でしたが、なかなか学ぶ機会のないロクロ型打ちを知り、技術を学べたことが参加してくれた方々にとって良い出会いとなり、ひいては九谷焼にとって良いきっかけととなれば幸いです。
電気がない時代、当たり前のことですが上絵だって薪で焼いていたのです!
上絵の薪窯は「錦窯」といい、近頃ではこの窯を使って上絵をたいている所は九谷でもあまりありません。
研修所では、本科1年生のカリキュラム「古九谷写し」の中でこの錦窯を使って作品を焼成しています。
そして先日、窯焚きが行われました。
真夏の空の下、途中にわか雨に降られながら約6時間の窯焚きでした。
窯を止めるタイミングは、窯の中に下げておいた色味片を見て確認します。
火を止め、焚き口の薪の燃え残りを取り出してその日の作業は終了。
さっそく次の日、期待の窯出しです!
同時に、電気窯で焼いた作品と薪のものと見比べて 焼き上がりの違いも見つつ、
なによりひと月かけて完成させた、初めての大皿。感慨もひとしおです。
講師に来てくださっている宮川哲璽先生に構図、筆遣いなどみっちり指導してもらいながら
古九谷の魅力のなんたるかを考え、制作してきました。
薪での上絵焼成も経験し、九谷焼の伝統の一端に触れる大切な時間となったことは、まちがいなし!
九谷焼技術研修所では、研究科のカリキュラムのなかで「ものづくり」から「売る」までを一貫して体験する実習時間をもうけており、毎年金沢にあるデパート、名鉄M’za内のクラフトショップ「クラフトA」にて「飯碗・湯呑展」を開催し、研究科の生徒作品の展示販売をさせて頂いています。
(昨年の展示風景)
講師に来て頂いている陶芸家の伊藤慶二先生、クラフトAのオーナー大場久子先生にもアドバイスをいただきながら、4月から研修生たちは展示に向けて作品の構想を練り、素材や技法の実験を繰り返してきました。
開催まであとちょうど一週間!
これまで取り組んできた成果を、皆様に見ていただく日が近づいてきました。
今は夢中で制作をするのみですが、どんな出会いがあるのか、どんな風に感じてもらえるのか、
実際売り場に立ってお客様と接することも何よりの勉強です。
まだまだ走り出したばかりの作り手です。だからこそ、
研修生達に多くのご意見をいただければと思います。
ぜひ会場にお越しいただき、研修生たちの挑戦を感じてください!!
九谷焼技術研修所「飯碗・湯呑展」
日時:平成23年 7月27日(水) 〜 8月2日(火)
10:00 〜 20:00(最終日は16:00まで)
場所:めいてつエムザ5階 クラフトAギャラリー
石川県金沢市武藏町15-1
新しい研修所案内パンフレットができました!
「温故知新」ならぬ「温故彩新」
"古きをたずね、新しきをいろどる" とは、まさに研修所のことです。
九谷の色絵の伝統を学び、これからの彩りを生みだす場所。
いいコピーです。
資料請求は、石川県立九谷焼技術研修所 (0761-57-3340) までお問い合せください。
研修所恒例の学外研修が6月3日と10日に行われました。
3日は本科1年生が九谷見学会として、加賀市や小松市の九谷焼にまつわる場所をめぐりました。
研修所に入って2ヶ月が過ぎ、研修生活にも慣れてきたこの時期、あらためて九谷焼の歴史と現在を知るべし!と
みんなでバスに乗って出発!
行程は・・・
古九谷窯跡→窯跡展示館→九谷焼美術館→製陶所→九谷焼技術センター→花坂陶石採掘所→製土所。
古九谷窯跡は加賀市山中町にあります。
一見、ただの「山」ですが、この斜面にはかつて九谷焼が焼かれたといわれる連房式登窯が2基と、古九谷再興に貢献した吉田屋の窯がねむっています。
訪れる先々で担当の方から詳しい解説をしていただき、今までぼんやりとしていた「九谷焼」の背景や歴史がはっきりとしてきました。
九谷焼の原材料「花坂陶石」の採掘場を見学したあと、製土所へ。
この山の石を砕いて水簸して・・・いつも使っている粘土はここから多くの手間を経て、九谷焼として生まれ変わります。
一日かけての九谷見学。この土地で九谷焼がどれだけ大切にされ、守られているかを感じることができたはず。
10日は本科2年生が金沢へ「陶壁見学」に行きました。カリキュラム「クレーワーク」の一環として、金沢市内に点在するさまざまな陶壁、公共施設やビルに設置された作品などを見学します。
クレーワークの講師は多摩美名誉教授の中村錦平先生。
中村先生は「陶芸」の概念をくつがえす、体当たりの作品を作り続けた作家です。昭和59年の開所以来、研修所の講師をつとめてくださっています。
中村先生は金沢出身ということもあり、市内の多くの場所に作品が設置されており、ひとつひとつ見学。
え、これがやきもの?これが壁?
と驚くものばかり。
中村先生の作品だけでなく、金沢市内は公共作品がいたるところにあり、一日かけていろいろ見て回ります。
この見学をとおして感じたこと、考えたことがこれから始まる「クレーワーク」の作品づくりにどう反映されるか!?
期待しています。