「宏大」と「幽邃」は相反する意味を持ちます。広々としたところは、明るく開放的であるのが定石。これに対して、幽邃の境地は、静寂と奥深さを持っています。ある老臣の拝観記には、「近うして望み見て曠濶(こうかつ)にして廣く、闊達(かったつ)にして闡明(せんめい)なり」とあり、広くて明るい庭であるとしながら「偏(ひとえ)に山中のごとし」と付け加えました。その頃から、人々は、兼六園に宏大と幽邃が共生していることを実感してきたのです。
石川県立歴史博物館所蔵
霞ヶ池