石川県立こころの病院

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蔦

患者状態適応型パス(PCAPS)について

クリニカルパスとPCAPSの違い

産業界におけるクリティカルパスの(作業工程)手法を医療に導入したものが、クリニカルパスです。主に、診療に必要な治療・検査やケアなどを縦軸に、時間(日付)を横軸にとった診療スケジュール表のことを言います。クリニカルパスを使用することで、モレのない診療行為を効率的に行なうことができ、医師・看護師・医療スタッフ間でのコミュニケーションが増すことが期待できます。 しかし、我々が対応しているのは産業機械ではなく『人』です。そのため、診療を展開していく中で『人』によっては時間軸による診療スケジュールが合わない事態(バリアンス)が生じます。
特に、精神科病院に入院する患者様は、緊急対応を要する危機的な状態から、状態が悪くなる前の早期対処として入院される方まで、入院時の状態(クリニカルパスでいう着工時の状態)や目的(アウトカム)は様々です。そのため、PCAPS精神科コンテンツでは入院から退院するまでの一連の過程を細かく分割した、『治療プログラムの単位』としての『ユニット』を生成しています。当院では、急性期をA-1・A-2ユニット、回復期をA-3・A-4ユニット、退院準備期をA-5・A-6ユニットという形に細分化しています。
クリニカルパスとPCAPSの最も大きな違いとして、PCAPSでは、『時間軸』ではなく『患者様の状態』を基軸として、滞在するユニットを選択する形式をとります。このような形式をとることによって、患者様の状態や目標に合わせてどのユニットからでも治療を開始することができると同時に、どのユニットへも移行が可能なシステムになっています。

高松病院で使用している PCAPS


治療開始後のユニット移行判断


実際に治療が開始された後の、ユニット移行判断』については、患者様の回復するスピードも様々ですので、現在A-1ユニットに滞在している患者様の目標状態が達成された場合、次は順番通りにA-2ユニットに移行するのではなく、患者状態を示した『移行ロジック』に沿って現在の患者様の状態に適応するユニットまでのチェックを行います。その結果、最も退院に近いユニットまで移行します。
 これによって、必要のない医療をはぶくことができますので、入院期間を短縮する。ということが可能になります。また、早期に社会復帰していただくことで、社会生活を中断したことによっておこる損失も最小限におされることができます。

治療の共有

精神障害によって入院医療が必要になるということは、患者様ご本人はもとより、ご家族にとってもとても衝撃的な出来事で、「これからどうなっていくの?」、「病気は治るの?」、「一生病院にいなくてはいけないの?」など様々な不安を感じる方が多いようです。また、どのように治療が進行していくのかということについても初めての体験では主治医から説明を受けても全く想像がつかないことが多いようです。
 そのような不安について、PCAPSについて説明を行うことで、患者様やご家族が、どのように治療が行われていくかの過程を理解されやすくなります。そのため入院時に、当院ではすべての入院患者様とご家族にPCAPSについて説明し(資料1.患者状態適応型パスについての説明)、治療の全容について理解するお手伝いと、ユニットの説明(資料2.ユニットの説明例)を行うことで、現在の目標状態につい患者様やご家族と共有しています。

研究・報告実績

2012年度報告
内容 報告者
日本精神科救急学会
「精神科救急病棟における患者状態適応型パスの有用性」
○中西清晃1),東川貞男1),大谷須美子2),齋藤雄一3),1)石川県立高松病院 2)財団法人信貴山病院ハートランドしぎさん 3)公益財団法人浅香山病院

2013年度報告
内容 報告者
北陸精神神経学会
「精神科救急病棟におけるPCAPSの取り組み」
○中西清晃,東川貞男,木谷知一,北村立

2014年度報告
内容 報告者
日本医療・病院管理学会
「精神科救急病棟における地域移行プログラムの質に関する分析」
○中西清晃,東川貞男,竹澤翔,石川県立高松病院.水流聡子,東京大学.伊藤弘人,独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
日本自治体病院学会
「患者状態適応型パス(PCAPS)の精神科救急病棟への適応に向けた分析」
○東川貞男1)竹澤翔1)中西清晃1)谷崎浩一2)水流聡子2)1)石川県立高松病院2)東京大学

2015年度報告

内容 報告者
日本医療・病院管理学会
「精神科における患者状態適応型パス(PCAPS)を用いたPDCAサイクルの実践-業務改善と能力向上-」
○竹澤翔,東川貞男, 中西清晃,石川県立高松病院.水流聡子,東京大学.伊藤弘人,独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
北陸精神神経学会
「石川県立高松病院における措置入院患者の臨床的特徴-医療保護入院患者のとの比較-」
○遠田大輔、中西清晃、竹澤翔、国分克仁、日野昌力、栃本真一、北村立 石川県立高松病院

2016年度報告 
内容 報告者
International Forum on Quality and Safety in Healthcare.2016
「Feasibility Study for Quality Evaluation of Psychiatric Care using PCAPS as Structured Tool of Clinical Process」
Satoko Tsuru1), Kiyoaki Nakanishi2), Shou Takezawa2)Koichi Tanizaki1), Sadao Higashikawa2) Hiroto Ito3)
1) The University of Tokyo 2) Ishikawa Prefectural Takamatsu Hospital 3) National Center of Neurology & Psychiatry
平成28年度日本精神科救急学会教育研修会in金沢
パネルディスカッション『精神科急性期にクリティカルパスは使えるのか?』
『クリティカルパスとユーザー』
○中西 清晃 石川県立高松病院
日本臨床知識学会オーガナイズドセッション
「これから求められる精神科医療の可視化・構造化・標準化」
座長 中西清晃 石川県立高松病院
   伊藤弘人 国立精神神経研究所
1.「急性期治療にクリティカルパスを導入
  して」
1.濵地典夫 千葉県精神科医療センター
2.「精神科医療における患者状態適応型パス
  (PCAPS)開発」
2.東川貞男 石川県立高松病院
3.「地域連携手帳を用いた精神障害者地域サ
  ポート体制の可視化・構造化・標準化」
3.竹澤翔  石川県立高松病院
4.「過疎地域における現状と課題」 在宅支援
  者の立場から
4.宮本満寛 らいず訪問看護ステーション