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- ニューヨーク駐在員便り 2007.10 -
米国におけるニューヨーク

憲法前文では、東部13州が連合体でなく、統一国家であると宣言された(写真は13本の星条旗)
 現行の成文憲法として世界最古であるアメリカ合衆国憲法Constitution of the United Statesの改正は、元の規定を直接変更せず原文を残したまま修正内容を修正条項Amendmentとして末尾に付け加えていくため、奴隷制廃止、黒人参政権付与、禁酒法制定など、条文自体が制定から220年間の歴史年表のようになっています。現在、修正条項は27条ありますが、1951年の修正第22条によって大統領の三選禁止が規定されました。したがって、来年実施される大統領選挙では現職のブッシュ大統領は立候補できず新しい大統領が誕生することになります。これまでは選挙前年の9月以降が立候補表明など事実上のキックオフで、年明け3月のいわゆるスーパー・チューズデーSuper Tuesday(複数の主要州において同時に予備選挙が実施される火曜日)において各政党の公認候補が決定し、同年11月の投票日を迎えるという流れが一般的でした。ところが、今回は各党の有力候補が春先までに次々と立候補表明し選挙運動が非常に早いペースで動いていることと相まって、各州が予備選挙の日程を1ヶ月程度前倒しし200825日が予備選挙の集中日(ニューヨークやカリフォルニアなど約20州が予定)となる見通しのため、その日を指してスーパー・デューパー・チューズデーSuper Duper Tuesday(超スーパーの火曜日)などという新語も生まれています。ところで選挙は間接選挙で、ほとんどの州でWinner Take All(勝者がすべてを獲得する)方式が採られています。国民は各州で大統領候補に投票しますが、ある州で勝った候補者がその州の選挙人Electorの全てである選挙人団 Electoral Collegeを獲得します。このように州毎の結果を積み上げていくと、選挙人数の多い州での接戦などによって、国民による得票総数では上回っても獲得選挙人数で下回り、結果として選挙に敗北するということが起こり得るわけで、それは実際に2000年の選挙で起きました。

 このWinner Take Allの概念は、大統領選挙だけではなく米国の社会にも存在します。富裕層は市場原理の競争社会において益々強くなり、貧困層との格差は広がり、貧困から来る健康問題や医療保険制度の問題等とも絡んで、超大国である米国の影を広げています。移民の流入等により低所得者層が多く住む都市部の不動産価格が下落し、固定資産税等の税収が減り教育等の公共サービスが低下し犯罪が増える一方で、富裕層が多く移り住む郊外の地域では教育を含む住環境が向上し、その結果、格差が更に拡大するという悪循環が米国各地で見られます。

障害を持った客を乗車させる運転手(時間はかかるがせっかちと言われるニューヨーカーも皆温かく見守る)

 ところがニューヨークはこの悪循環にはないようで、不動産価格は全米の下落傾向を余所に未だに上昇を続け、治安も大変良い状況にあります。先月、日本の外務省が発表した海外在留邦人数調査結果によれば、海外の3か月以上の長期滞在者と永住者の合計は約106万人(前年比5%増)で、最多が米国の37万人、都市ではニューヨークが48千人とトップでした。もっとも人口約820万人のニューヨーク市では約3分の1が米国外出身者で、日本を含む百以上の言語と文化が折り重なり、多様な人・モノ・情報があるがままに存在することを許容することによって、世界に類を見ないほどの多様性が存在しています。米国にあって米国でないような何か特別な都市で、時にはこの街には常識とか標準といったものはないのではないかと感じることさえありますが、その多様性の中に様々な可能性を見出すため、全米のみならず世界各国から多くの人々が集まって来ます。

 さて、2004年に石川県ニューヨーク駐在員として赴任して以来、現場で感じたことをできるだけ率直に石川県の皆様にお伝えしようと、40回以上に渡ってこの駐在員便りを執筆してきましたが、本稿が最後となります。この間、米国経済は堅調に成長してきましたが、他方で長期化するイラク戦争、多発する大規模自然災害、高止まりが続く原油価格、銃規制やサブプライムの問題、そして8月の雇用が4年ぶりに減少に転じるなど、先行きの不透明感も増しています。一方、ニューヨークは6年前の同時テロのダメージを乗り越えた感があり、今後も世界経済・文化の中心であるに違いありません。本県の産業・観光・文化などあらゆる情報発信がこの多様性の街から世界に向けて発信され、その成果がますます増えていくことを願ってやみません。



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