国宝・瑞龍寺は、高岡に築城し、この地で亡くなった加賀二代藩主前田利長公の菩提を弔うため、三代藩主利常公が建立した曹洞宗の古刹である。美しく配置された伽藍が端正な気品を湛え、高岡を代表する観光スポットとなっている。
 瑞龍寺を案内する際、杉山さんは行き帰りの二度、境内に向かってさりげなく一礼する。
 「お客様の感嘆は私たちの誇りと喜びです。その機会を与えて下さる瑞龍寺への感謝の念が、そうさせるのかもしれません」
 明快な語り口のせいか、案内中に「先生をされていましたか」と聞かれることも少なくない。


 平成二十一年に開町四百年を迎えた高岡は、瑞龍寺をはじめ、高岡城の面影を残す広大な古城公園、土蔵造りの町並みが続く山町筋(国の重要伝統的建造物群保存地区)、千本格子の家並みが美しい高岡鋳物の発祥地・金屋町、鋳物技術の粋を結集した日本三大仏・高岡大仏など、優れた文化遺産に彩られており、今年六月には国の「歴史都市」に認定された。
 代表的な万葉歌人である大伴家持が国守として赴任し、数多くの秀歌を詠んだ「万葉のふるさと」でもあり、初めて訪れた観光客の多くが「思いのほか素敵なまちですね」「見所がこんなに多いとは」と感心するという。
 「一人でも多くの方に『もう一度訪ねたい』と思っていただけることを願いながら、高岡の奥深い魅力をお伝えしています」


 来年には北陸新幹線の「新高岡駅」(仮称)が着工される。岐阜県高山市や石川県七尾市と最も時間距離の短い新幹線駅になることから、平成二十六年度末までの開業に向け、「飛越能の玄関口」を発信していくことが高岡の重要なテーマになっている。
 杉山さんも「観光振興の大きなチャンス」ととらえ、「あいの風」のさらなるパワーアップとレベルアップに努めるつもりである。