三国港に水揚げされたばかりの越前がにを、その日の夕膳に供する。それがあわらの宿ならではの流儀である。 「とびきりの鮮度だから、どこのズワイガニよりもおいしいのです」 古今東西の食通をうならせてきた越前がにへの思い入れは、ことのほか深い。 女将歴38年。「感動をおみやげに」を旨に、おもてなしの心をひたすら追求してきた。 |
あわら温泉では、自家掘りの源泉を宿ごとに持っている。「湯めぐり手形」が好評なのは、微妙に成分が異なるそれぞれの湯を気軽に比較体験できるからだ。 また、昨年12月には屋台村がオープンし、越前がにや甘えび、越前おろしそば、福井発祥のコシヒカリをはじめとする山海の幸を扱った料理を楽しむことができる。 さらに、あわら温泉の周辺をたどれば、奇勝・東尋坊などの美しい自然、深山にたたずむ大本山永平寺や太古のロマンあふれる福井県立恐竜博物館、春には足羽川原に咲き誇る約2.2kmの桜並木など、現代人を癒す魅力的なコンテンツに事欠かない。 「都会の喧騒を離れてくつろぐには最高の温泉地でしょう。とりわけ、ファミリーや小グループのお客様に喜ばれているんですよ」 |
女将の会会長に就任して以来、積極的にあわら温泉の魅力を発信してきた。しかし、関東からのお客様はまだまだ少ないのが実情だ。最大のネックは交通アクセスである。 「あわら温泉が『日本の奥座敷』になるためには、北陸新幹線と芦原温泉駅がどうしても必要なんです」 悲願の早期実現に向けて、政府への要請活動にも労を惜しまない。 「越前がにの神髄を、東日本のお客様にもぜひ味わっていただきたいですね」 熱い想いを柔らかな笑顔に包んで語る、さわやかで素敵な女将さんである。 |