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呼吸器外科

○専門分野・特徴

 当院では年間約300例の呼吸器外科手術を施行しています。しかし手術数は呼吸器外科治療のひとつの実力指標に過ぎないと考えています。切除困難な手術、背景疾患を多く有した患者さんの手術、QOLを高める手術、これらを行う姿勢・実力と手術数とはあまり関係がありません。また、医師数の多い施設では施設全体での手術数が多くなるのは当然です。しかし施設でのグループ数や医師数が多くなることで一人一人の医師の手術数は逆に減少します。よって、一概に手術の少ない施設が手術が下手というわけでもありません。当院での特徴は全ての患者さんに対し1つのグループで治療を行うことにあり、多くのグル―プを有する大規模な施設とは異なります。
当科で扱う疾患はあらゆる胸部(呼吸器、縦隔など)疾患です。地方基幹病院の使命として癌だけを扱うのではなく、さまざまな呼吸器・胸部疾患・外傷に対応しています。

 呼吸器外科手術の中で半数以上が肺癌の手術です。肺癌の治療において手術は大変大切な治療のひとつであることは言うまでもありません。しかし、誤解してはいけないのは手術は癌に対する局所治療のひとつにすぎないということです。癌の治療として多くの患者さんは手術だけでなく化学療法、放射線療法などを組み合わせた集学的治療が必要です。当科では手術だけに拘ることなく、その後の患者さん個人個人に応じた集学的治療に拘る姿勢・知識を持つよう努力しています。当然、手術がその患者さんにとってあまり利益がないと判断すれば手術を取りやめることもありますが、他施設で手術できないと言われた方が当院で手術を行う事の方が多い傾向ですので、諦めずに一度ご相談ください。


1)肺悪性疾患に対する胸腔鏡下手術の実践

   原発性肺癌に対する手術において、@根治性:いかに癌を完全に切除し、リンパ節郭清を施行するかが最も重要な点です。次に重要なのがA術後QOL(生活の質): いかに術後疼痛を抑え、美容的、精神的にも改善された手術を行うかという点です。

 胸腔鏡下手術で創が小さくても@の手技が完遂できないような状況であれば、開胸手術をすべきであると考えます。胸腔鏡下手術の定義は現在でも、明確ではありませんが、当院では最初から最後までモニター視で行う手術を胸腔鏡手術(VATS、TS:完全胸腔鏡下手術と呼ばれることもある)としています。いくら創が小さくても肉眼で基本的に行う手術は胸腔鏡下手術とは呼びません。現在、胸腔鏡下手術は、手術をモニター視のみで行うか、肉眼とモニター併用で行うかで、完全胸腔鏡下手術(c-VATS)と小開胸胸腔鏡補助下手術(Hybrid VATSなどと言われることもある)に大きく分類されていますが、開胸創がたとえ4-6cmであっても、開胸器をかけて肋間を開排し、ほとんどの過程を肉眼で行う手術は手技的には通常の開胸手術となんら変わりません。これらの小さな創から肉眼で行う手術は、視野が狭く極めて危険である場合があることがわかっています。大きな創で行う手術よりも肋間の開排による術後の胸痛(肋間神経痛)が重篤になる可能性があります。当院では基本的に胸腔鏡下手術はハイビジョンモニターシステムを用い、3cmの小開胸創および1-2cmの小穴2箇所にて施行しております。また、開胸による胸腔鏡補助下手術は8cm程度の小切開と1-個所の小さな孔で当院では手術を行っておりますが、年々、手術適応は胸腔鏡下手術が広がり、小開胸胸腔鏡補助下手術はほとんどなくなってきています。通常は胸腔鏡下手術が非適応と判断した場合は通常8−12cmの開胸創でヘッドライトと胸腔鏡補助下に主として直視下で手術を行っています。よって、全ての肺疾患において胸腔鏡下手術が可能というわけではありませんのでご承知ください。


2)進行期悪性腫瘍に対する拡大手術の実践

 肺癌検診により、早期肺癌の割合が増えてきましたが、依然、手術適応のないとされている病理病期IIIB期―IV期の進行癌が多いのが現状です。しかし、画一的にこれらのステージの疾患が手術適応にならないというわけではありません。手術をする意義は患者さん本人の状態と病態により異なります。がん細胞の悪性度が予後に与える影響が大きいため、ステージが高くても、全ての肺癌に対して一概に手術を否定することはできません。ただ、統計学的には手術のメリットが少ない、逆に手術がデメリットとなる場合が高いステージの癌に多くなるという意味です。当院では他院で手術が不可能と診断された患者さんを再度検査し、総合的に患者さんのメリットがあり、手術可能と判断すれば施行することもあります。QOLを考えて、根治的な手術が困難な場合も、手術+化学療法および放射線治療などの集学的治療により、進行癌に挑む場合もあります。肺門部肺癌、隣接臓器浸潤肺癌、パンコースト肺癌などでは積極的に気管支形成、血管形成、胸壁再建、横隔膜再建、心臓再建などを含めた肺機能をなるべく温存した拡大手術を行っています。パンコースト肺癌では、術前放射線化学療法を施行することで極めて予後の良好な結果が得られています。悪性胸膜中皮腫に対しては胸膜肺全摘術や壁側胸膜切除/肺胸膜剥皮術などを施行しています。進行期悪性腫瘍に対する治療は集学的治療(手術、化学療法、放射線療法などの組み合わせた治療)が必要です。術後QOLを大きく損なう可能性のある手術は、患者さんおよびご家族との綿密な話し合いにより同意を得て治療選択を行います。


3)小型肺癌に対する縮小手術の実践

 肺癌検診などで小型腫瘍が増加傾向にあります。肺癌の径は以前は単純にその直径を計測していましたが、新しい分類ではすりガラス成分と充実成分との大きさにより分類されるようになりました。充実成分の無い3cm以下の直径の肺癌は上皮内癌と呼ばれ、極めて早期の肺癌となります。これらは部分切除で根治が可能です。肺癌は1995年以降本邦では、直径が2cm以下の腺癌に対しては野口分類という病理分類法が多用されていました。(現在は分類法が変更されました。)この分類はA−Fに分類されていますが、中でもA,B型は早期肺癌の中でも浸潤性のほとんど無い極めて予後良好な癌であることがわかっています。C―F型は浸潤性のある肺癌ですが、直径が2cm以下の肺癌では区域切除により切除肺を少なくしても、再発率や予後が変わらない可能性があるため、現在その手技の妥当性が検討中です。しかし、現在はまだその結果が出ていません。区域切除や肺部分切除は確かに肺切除量は少なくなりますが、切除断端に癌細胞を残存させる危険性があるため、呼吸器機能が十分な人で、密度の高い腫瘍陰影の割合が高い場合は、基本的に肺葉切除を優先させます。特に、増殖速度が遅い肺癌の場合は5年以上経過した後での再発の可能性があります。また現存する検査で癌の病巣がわからなくても顕微鏡額的な癌細胞が残存すれば(理論的には1つの癌細胞が残存していても)、10年以上経過してからの再発が起こった場合、再手術が却って侵襲が大きくなることが予想されます。よって、区域切除などの縮小手術は、腫瘍径だけの判断では現時点では絶対的な適応ではないと考えています。当然ながら、低呼吸機能の方には呼吸機能を温存する目的で、縮小手術特に区域切除を施行しています。

A bronchioloalveolar carcinoma (BAC) (Adenocarcinoma in situ, AIH)
B 肺胞構造の虚脱のあるBAC (AIH > AIH with minimal invasion)
C 線維芽細胞の増殖のあるBAC (AIH with minimal invasion)
D 低分化腺癌 (solid)
E 管状腺癌 (acinar)
F 乳頭状腺癌 (papillary)


4) 縦隔腫瘍に対する胸腔鏡下手術の実践

 被包化され限局した比較的小型の腫瘍であれば胸腔鏡下での手術を行っております。胸腔鏡下手術では胸骨を切らないメリットがありますので、創が大きくない希望が強かったり、高齢者でなるべく負担軽減したい場合などに行います。手術は胸壁に2−3ヶ所ほどの小穴を設けるか、胸骨下に1つの小切開(単孔)をおいて、胸腔鏡下に腫瘍の摘出を行っております。専門性の高い神経内科および麻酔科との連携のもと胸腺腫瘍の合併如何を問わず重症筋無力症に対する拡大胸腺(胸腺腫)摘除術を施行しています。腫瘍がない場合、小型である場合は単孔による拡大胸腺(胸腺腫)摘除術を施行しています。


5) 良性胸部疾患における胸腔鏡下手術の積極的導入

 胸部の異常陰影については、経過のみることの許される影とそうでない影との厳密な区別を行い、悪性の可能性が否定できないものに対しては積極的に胸腔鏡下での肺生検を行っています。CTガイド下でのマーキングと細径カメラを用いて、5-10mm穴計3ヶ所の小穴で生検を施行しています。また、良性腫瘍、気胸を含めた肺疾患などにおいては積極的に胸腔鏡下手術を施行しています。手掌多汗症では基本的に細径胸腔鏡用具を用いて1側の第4交感神経の切離を行い、代償性発汗および手掌多汗の改善の程度を見極めた上で、対側の交感神経の切離(第4もしくは第3+4)を行います。こうすることで、最大の合併症である代償性発汗の程度と効果をバランスの良いものにできると考えています。


6)化学療法、放射線療法などの補助療法の積極的導入

 癌(悪性腫瘍)が良性腫瘍と異なる点は転移・浸潤・再発など通常良性腫瘍では起こりにくい性質を持っているからに他なりません。肺癌は他臓器の癌と比較しても、これらの転移・浸潤・再発が起こりやすいことが知られています。当院では、直径0.8cmの肺癌がすでにリンパ節転移を有していたケースも経験しています。また、過去には術後5年で再発がなければ安心とまで言われていましたが、術後10年経過して再発がみつかるケースも経験しています。たとえ検診などで小さな肺癌で見つかっても、PETやCTなどの現在の医学で行われる精度の高いとされる診断機器でも検出不可能な(肉眼や検査では見えない顕微鏡レベルの)癌細胞が身体の中にすでにある可能性があります。これらの癌細胞は肉眼では当然見えませんので、手術でいわゆる“検査で認識できる(見える)腫瘍”を取り除いても、手術のあとに大きくなり、出てくる(検査で見つかるようになる)可能性があります。これを一般には転移、再発という言葉で呼んでいます。手術を行う時点で、このような転移しているかもしれない小さな病巣は認識できません。しかし、主病巣が発見されればなるべく早く切除することが根治性のある治療の可能性を拡げます。手術は局所治療ですので、どのような腕の良い外科医であろうと、いくら完全に検査で見える癌病巣の切除を遂行できても、これらの目に見えない癌細胞を全て取り除くことはできません。これら目に見えない癌細胞に対する治療が全身療法である化学療法です。また、生存率を向上するために再発病巣に対して、再手術、また化学療法、放射線療法など手術以外の治療法を積極的に提供いたします。最近では肺癌の組織型や遺伝子変異(EGFR遺伝子変異、EML4-ALK融合遺伝子, BIM遺伝子多型など)の有無により、効き易い抗癌剤の種類が異なることがわかってきました。例えIV期の肺癌でも、10年以上抗癌剤でコントロールされ長生きされている方も増えてきました。これら集学的治療により、延命が期待できるようになってきました。


原発性肺癌のTNM分類(肺癌取扱い規約第8版)
2017年1月〜第8版


T-原発腫瘍
 TX:原発腫瘍の存在が判定できない、あるいは喀痰または気管支洗浄液細胞診でのみ陽性で画像診断や気管支鏡では観察できない
 T0:原発腫瘍を認めない
 Tis:上皮内癌(carcinoma in situ):肺野型の場合は、充実成分径0cmかつ病変全体径≦3cm
 T1:腫瘍の充実成分径≦3cm、肺または臓側胸膜に覆われている、葉気管支より中枢への浸潤が気管支鏡上認められない(すなわち主気管支に及んでいない)
   T1mi:微小浸潤性腺癌:部分充実型を示し、充実成分径≦0.5cmかつ病変全体径≦3cm
   T1a:充実成分径≦1cmでかつTis・T1miには相当しない
   T1b:充実成分径>1cmでかつ≦2cm
   T1c:充実成分径>2cmでかつ≦3cm
 T2:充実成分径>3cmでかつ≦5cm、または充実成分径≦3cmでも以下のいずれかであるもの
 ・主気管支に及ぶが気管分岐部には及ばない
 ・臓側胸膜に浸潤
 ・肺門まで連続する部分的または一側全体の無気肺か閉塞性肺炎がある
   T2a:充実成分径>3cmでかつ≦4cm
   T2b:充実成分径>4cmでかつ≦5cm
 T3:充実成分径>5cmでかつ≦7cm、または充実成分径≦5cmでも以下のいずれかであるもの
 ・臓側胸膜、胸壁(superior sulcus tumorを含む)、横隔神経、心膜のいずれかに直接浸潤
 ・同一葉内の不連続な副腫瘍結節
 T4:充実成分径>7cm、または大きさを問わず横隔膜、縦隔、心臓、大血管、気管、反回神経、食道、椎体、気管分岐部への浸潤、あるいは同側の異なった肺葉内の副腫瘍結節

N-所属リンパ節
 NX:所属リンパ節評価不能
 N0:所属リンパ節転移なし
 N1:同側の気管支周囲かつ/または同側肺門、肺内リンパ節への転移で原発腫瘍の直接浸潤を含める
 N2:同側縦隔かつ/または気管分岐下リンパ節への転移
 N3:対側縦隔、対側肺門、同側あるいは対側の前斜角筋、鎖骨上窩リンパ節への転移

M-遠隔転移
 M0:遠隔転移なし
 M1:遠隔転移がある
  M1a:対側肺内の副腫瘍結節、胸膜または心膜の結節、悪性胸水(同側・対側)、悪性心嚢水
  M1b:肺以外の一臓器への単発遠隔転移がある
  M1c:肺以外の一臓器または多臓器への多発遠隔転移がある
 ※M1は転移臓器によって以下のように記載する
  肺 PUL  骨髄 MAR  骨 OSS  胸膜 PLE  リンパ節 LYM
  肝 HEP  腹膜 PER  脳 BRA  副腎 ADR  皮膚 SKI  その他 OTH



原発性肺癌のTNM分類

参考図書・WEB

手術数でわかるいい病院 2017全国&地方別データブック (週刊朝日MOOK 2017/3)
全国名医・病院徹底ガイド 松井 宏夫 (主婦と生活社; 最新五訂版版 2010/11)
病院の実力 2015   (読売新聞社)
間違いだらけ!病院・医者選び  (プレジデント 2011 1.3号)

http://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20100630102.htm

http://www.zakzak.co.jp/health/doctor/news/20100617/dct1006171623000-n1.htm

http://www.pref.ishikawa.jp/ipch/bestdoctors.html


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